甘い夜更け。朝を憎んだ。
夜乃の失踪を聞いた時は、特別に驚きはしなかった。

あれほどの人間なら手に入れたいと、自分の物にしてしまいたいと魔がさしてしまうのも分からなくはないし、
自主的な失踪だったのなら、何もかもが嫌になることだってあるだろう。

たぶん夜乃は周りからの期待値が高すぎる。
それは彼女の本来の能力を無視して。
与えられた人並外れた容姿のせいで。

振り向いて欲しい。
その視界の隅にでもいいから自分の居場所が欲しい。
心をどうにかしてしまいたい。いや、されてしまってもいい。

そういう類の、神格化されてしまった何か。

一人の少女が抱えるには羞恥で、重すぎる期待だ。

それが理解できてしまう自分が悲しかった。
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