甘い夜更け。朝を憎んだ。
「残念です。負けましたよ。他を当たるしかないですね」

「他人にどう接するかまでは俺の範疇にないので知りませんけど。訴えられないように気をつけてくださいね」

記者は忌々しそうな目をして、俺から離れた。

何人もの生徒達が集まる報道陣にインタビューを求められていた。

教師が躍起になって止めにかかる。

テレビに映るかもしれないと、照れ笑いを浮かべて前髪をイジる女子までいる。

家族や親友にとってかけがえのない存在が失踪してしまっても、「非日常」に心躍らせる不謹慎者のエンタメにされてしまう世の中だ。

夜乃は姿を消してしまって正解だったのかもしれない。

ただでさえあの容姿では必要以上に人の目に晒されてしまう。

夜乃だからこんなにも生徒達の関心を集めてしまっているのかは定かではないけれど、
元々学園内で注目の的だったことは否めない。

夜乃は一生、引かれた暗幕の中で静かに漂っていればいい。
夜乃には朝など訪れる必要はない。

教師の制御も虚しく、向けられたカメラに向かって嬉々として喋る生徒達を見ていると、夜乃が不憫にすら思えた。
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