甘い夜更け。朝を憎んだ。
「なんで分かったの」

女子の素肌はひんやりと冷たかった。
七月の校内はエアコンが無い場所では蒸し蒸しと汗ばむくらいなのに。

どこでもよかったんだけど保健室には保険医が居るし、適当に入った空き教室は閑散としていて、
使用しない教材や機材、机なんかを追いやる為だけの教室みたいだった。

エアコンなんてもちろん設置されていないし、
電気は点くけれどバレないように点けなかった。

カーテンの隙間から漏れる頼りない光だけが女子の白い肌をチラチラと浮かび上がらせた。

「なんのこと?」

「蜜くんとしたいってこと」

この子が俺の前でネクタイに触れる時。
俺に触れて欲しいって合図だってこと、三回目にもなればさすがに気づく。

「わかんないよそんなこと」

「嘘だぁ。来てくれたっ…じゃん」

「俺がしたいからだよ」

「も…ずるい」

「肌、相変わらず白いね」

「言わないでよ。恥ずかしい」

「なんで?きれいなのに」

事実だけど、どの言葉の語尾にも「夜乃のほうが、そうだけど」という言葉がくっついてしまう。

俺の全ての言葉を信じて悦に浸っているこの女子が、
もしも脳内では他の女を想像しながらきみを抱いてるよって、知ってしまったらどんな風に表情を歪ませるのだろう。

想像してみたら脈が早くなった気がした。
俺も相当にイカれてる。
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