甘い夜更け。朝を憎んだ。
「ごめん。全然分かんないや。なんで言葉で愛でるのがアウトで粘膜はセーフなの」

「あははっ!蜜くんってば、粘膜とかダイレクト過ぎだって!」

楽しそうに手まで叩いて笑うこの子のことを、俺は到底理解できそうもない。

「普通はさ、自分とだけして欲しいとか思うもんなんじゃないの」

「じゃあ蜜くんはそうしてくれるの?」

「…しないと思うけど」

「でしょ。私達はさ、虚しいし自分で望んでるくせに時々ムカついてきちゃう時だってあるけど…それでも蜜くんみたいな最高の男に一瞬でも求めてもらえたことをステータスにしてないとどうにかなっちゃいそうなさみしい女なの。それしかないの」

「へぇ…。でも全員がってわけじゃないよね」

「全員ではないよ。でもそうやってそこまでして優越感を満たしてなんとか呼吸を繰り返してる子がほとんどだよ。ココではね。同じ土俵で戦うってやつ?」

「俺じゃなくてもいいのに。きみ達くらいならいくらでも素敵な恋愛ができるんじゃないの」

「本当に野暮だね。あのさ、目の前にこんなにとびきりの男が居るんだよ?一度くらいは遊んでみたいじゃん。そういう可能性も″今の私達″じゃなきゃムリだって。今の私達は思ってる」

「年齢なんか本当に関係ないと思うけど」

「そんなの、今の私達には分かんないよ」

「そっかぁ」

年齢なんて本当まったく関係ないと思う。
ただの自然現象に過ぎないし、年齢がどうこうなんじゃなくて、そこに応じたその人自身の魅力がどうかってだけだ。

けれど、今のこの子達にそれを説いてみたって理解できないことも分かる。
この先の俺がどうなっていくかなんて俺には分からないのと同じで、この子達の輝きは今だけだと信じているのだろう。

その一番美しいと信じている瞬間にとびきりの恋愛ごっこをしてみたい、という気持ちも決して悪ではないと思う。
相手が本気の恋愛を望んでいるのなら極悪だけど…。
それが俺なら、まぁいっかって感じ。
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