甘い夜更け。朝を憎んだ。
朝普通に登校して、綺麗な顔で微笑む。
夜にはその纏った微笑みを妖艶に変えて、知らない大人と腕を組み、繁華街の奥へと消えていく夜乃を想像してみた。

違和感なんてない。
人並み外れた容姿にやわらかそうな肌。少女特有の艶。
夜乃は強く望まなくても、学園の外でも平気で生きていける武器を確かに備えている。

その武器を壊すことも奪う方法も俺達は持っていない。
精一杯の攻撃は妬み嫉みで知り得る限りの恨み言を吐き捨てて、真実さえも捻じ曲げて糾弾することだけだ。

そんな稚拙な悪意で折れるほど夜乃がヤワな人間には見えなかったけれど。

夜乃がヤワな人間だったとすれば、耐えきれずに自ら失踪したのだと決めつけることになる。

じゃあ、何もかもにスッと嫌気がさして、知らないおじさんとどこか遠くにでも逃亡した?

そんな姿も全然ピンとこない。

現実。俺の目にはっきりと映る世界は、
夜乃が消えた日常を、そんなには憂いていないということだけだった。

両親と、ただひとり。
佐藤アマイを除いては。
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