甘い夜更け。朝を憎んだ。
本家に荷物を置くと、すでに待ち構えていた従姉妹に連れ出されてここに居る。
俺達の他には誰も居なかった。

年々、若年層は田舎を捨てて都会へ出る。
残された老人達は順番待ちのように少しずつ姿を消していく。

過疎化が激しいこの田舎町があと何年生き延びれるのか、当人達がどれだけ気にかけているのかは判然としない。

「別に去年と何も変わんないよ」

「生徒会長なんでしょ」

「生徒会長ってだけだよ」

「″だけ″って!学校でたった一人の存在なんだよ?」

「んー。俺は別に特別感は持てないなぁ」

「はー。これだから恵まれた奴は」

「やきもち?」

「うるさい」

「そっちこそどうなの」

「何が?」

「ハタチになったことのほうが重要でしょ。生徒会長よりも」

「そんなのは自動更新で誰にでも訪れるんだよ。生きてさえいれば当たり前に」

「生きてることが当たり前じゃないですからね」

「なに、急に。蜜ってそんな宗教家みたいなタイプだったっけ」

「まさか。生き死にに対してなんの思想もないよ」

「安心した」
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