甘い夜更け。朝を憎んだ。
「恋人、できた?」

「なんでそんなこと聞くの」

「高校の頃もモテてたでしょ?大学でも“マドンナ”とかやってんじゃないの」

「あれ、もしかして私のこときれいだって思ってくれてたりする?」

茶化すような口調に、ふっと息が漏れる。
「なに笑ってんのよ」ってむくれられた。

「そりゃあ周りよりは美人なんじゃない?」

「なんでよ」

「俺ら従姉妹なんだし」

「あー。ちょっとはおんなじ遺伝子が流れてるから?」

「ちょっとはね」

従姉妹の小さくて薄いくちびるが、俺のくちびるに触れた。
かすめるだけみたいなキスに温度はあまり感じなかった。

「いとこ同士なのにこんなことしちゃダメかな?」

「きみはどう思うの」

「背徳感、くらいはあるよ」

「それ、いいやつ?」

「良くはないでしょ」

「じゃ、やめといたほうがいいね?」

背伸びをして俺の首に腕を回した従姉妹が、
今度はもっと強くくちびるを押しつけた。
舌先の感触がした。

「やめたくない悪いこともあるでしょ?」
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