甘い夜更け。朝を憎んだ。
左手は腰に回して、手持ち無沙汰だった右手で髪を撫でてあげる。

さっきよりも渇いた髪が指の隙間をすり抜けていく。
知らないシャンプーの香りが鼻先をくすぐる。

本家のほうから聞こえてくる騒がしい声。
隠れて肌を合わせるいとこ同士。

学園の外で俺がこんな風に振る舞う意味もないんだけど。

年に一、二度しか会わない、一番身近な女の子。
従姉妹が大人になっていくたびに、その瞳に宿した俺への評価や期待の色が変わっていくことにも、気づかないふりをするにはあまりにも顕著過ぎた。

年中そばに居るわけではない。
夏の間の火遊びみたいなものなんだろう。

もしかしたら従姉妹の中にも、あの女子が言った劣等感や鬱憤が渦巻いているのかもしれなかった。

それならハタチという、特別で大きな節目を迎えた従姉妹は、学園の少女達よりも強い焦りや希望があるのかもしれない。
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