甘い夜更け。朝を憎んだ。

一番だとか特別だとか

「蜜くんっ」

来栖が俺の右腕を掴んで体を密着させてくる。

八月。
真夏。
炎天下。

陽炎でバーベキューの為にセッティングされた大きすぎる鉄板も、
庭の草花も、クラスメイトの表情すらも全部がゆらゆらと揺れて見える。

蝉の声があまりにもうるさすぎて、パチンコ屋の前を通り過ぎる時の感覚を思い出す。

「あっつい」

一言、愚痴ったのに来栖には全く響かない。

「ほんとーに来てくれてうれしいー!信じてたよ!」

八月中旬。
クラスで計画されていた通り、バーベキュー大会が開催された。

来栖の自宅は外から見ても内側から見ても本当に文字通りの豪邸で、庭もクラスのほぼ全員と他クラス、プラスアルファしても全然窮屈に感じなかった。

来栖はさっきからやってくるクラスメイト達が俺へと視線を飛ばすたびに、
「私が呼んだんだからね!」って俺とのトークアプリでのやり取りを得意げに見せびらかしている。

個人的に繋がっている。
それだけでもステータスになるみたいだった。

「手が足りてないとこどこ?」
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