甘い夜更け。朝を憎んだ。
みんながせっせとバーベキューの支度に取り掛かっている。
今日は学園の友達たちと満喫したいからと、来栖は使用人さん達の手出しを禁止していた。

そういうところは素直に可愛いなと感じる。
「一軍らしい」プライドが高いし、すぐに得意げになったりするけれど、
友達を大事にしていることも嘘じゃないんだと思う。

じゃなきゃ自宅でこんなに面倒なこと、そうそう率先して計画なんてしないだろう。

「蜜くんは来てくれるだけでいいって言ったでしょ!」

「そんなわけにはいかないよ。みんなが頑張ってるんだから」

「でも服汚れちゃうかもよ」

「それはみんなもだろ」

「えー…でもぉ…」

よっぽど俺のそばから離れたくないのか、来栖は俺の腕に絡みついている自分の腕に力を込めた。

断ることもできたけれど、参加した以上ここでダラダラしているのはさすがに決まりが悪い。
無闇に反感を買うメリットもないし。

だから俺は、俺らしくずるい顔とずるい声色で言った。
空いているほうの手でちょっと来栖の首筋に触れながら。

「じゃあさ、あっちで一緒にフルーツでも切ろうよ。みんな肉や野菜ばっかで手付かずだし。それなら一緒に居れるでしょ?」

「っ…」

みんな同じ。
来栖の顔も、その他大勢のおんなじ顔ときれいに重なり合った。
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