甘い夜更け。朝を憎んだ。
「…アッハハ!蜜くんってばおもしろーい。なんの冗談?」

「冗談って、何が?」

「もしかしてそういう性癖?知らない相手とこういう関係だけ持っちゃったことにそそられるとか?」

「なにそれ。むしろ逆でしょ。こういう関係持っちゃったからこそ、せめてきみが誰なのかくらいは知っててあげたほうがいっかなって」

「………全然認知すらしてないってこと?」

「認知?なにその怖い言い方」

「サイッテー!」

バチンって頬にぶつけられた手のひら。
じわっと熱が広がったけれど、そんな痛みはすぐに消えるだろう。

女子生徒は雑に制服を着直して、生徒会室のドアをできる限りの力で乱暴に閉めて出ていった。

どうやら最中に自己紹介を求めると、それも屈辱を与えてしまうらしい。
名前を聞いたってどうせ忘れるんだけど。

あんなに怒るってことはもしかしたら俺と同じ、三年生だったのかも。

めちゃくちゃ怒っていたけれど、
俺が最低な生徒会長ってことくらい知ってて近づいてきたくせに。

成績優秀で文武両道で?顔もスタイルも完璧なのに、クズ。
「そこがたまんない」ってお前らだって喜んでるくせに。

そんな風に一瞬傷ついたふりしたって、
どうせ放課後になればそんなことに構ってる暇はないって忘れるんだろ。

夢があるから。
趣味も友達も、もしかしたら本命の恋人も。

あいつらの手の中には俺よりもずっとずっときれいな物で溢れている。

たった一つだけでいい。
それら全部を凌駕する物が欲しかった。
< 6 / 185 >

この作品をシェア

pagetop