甘い夜更け。朝を憎んだ。
来栖が俺から離れたことによって自分の役目は果たした気がした。

俺がここに居座る必要はもうないんだけど、
来栖が離れたからこそ、別の女子が次々と近寄ってきてはせっせと俺の世話を焼いた。

愛着、というよりも介護みたいに思えてきた。

さっき来栖が皮を剥いた桃の果実を口元に運ばれた時、「アレルギーなんだよね」って言ったら、
「どうなっちゃうの」って女子が妙に楽しそうに口角を上げた。

「さぁ?変になっちゃうかも」

「なにそれ。やーらし」

アレルギーなのは本当だけど、
言葉ひとつでそれすらも娯楽になる男と女が怖い。

それでしか世界を守れなさそうな自分が怖い。

俺と女子のやり取りを離れたところから睨みつけるように見ていた来栖が、俺と目が合うとパッと逸らした。

彼女でもなんでもないのに。

会費の徴収に役立つから生徒会の会計も呼ぼうよ、なんておちゃらけていた来栖はその日、結局誰からも会費を徴収しなかった。

「払うよ」

「いらないってば」

「悪いよ」

「なんで蜜くんが?みんな喜んでんじゃん」

「みんなはそれでいいだろ」

「みんなからは貰おうと思ってたけど!」

「じゃあ貰えばいいじゃん」

「蜜くんからは貰わないつもりだった!でも蜜くんだけを特別扱いするなんてもうバカみたいだからさぁ。あなたは特別じゃないよって八つ当たりだよ!」

「八つ当たり」

「そうだよ」
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