甘い夜更け。朝を憎んだ。
他の男子なら、こんな風にイジけてしまった来栖の姿は可愛いのかもしれない。

だけどこんな風にイジけられたり八つ当たりされるほどの関係性は、俺と来栖の間にはない。

「あのさ」

「なによ」

「一番だとか特別だとかはもういいよ」

「なに言ってんの…」

「求められれば俺は応えるし望むならなんでもしてあげるよ。でもそれは来栖さんにだけじゃない。他の子よりも特別なものが欲しいのなら他をあたってよ」

「っ…蜜くんってほんっとにさいってー!聞いてた通りだね!」

「最低で有名なんだ?」

「みんな言ってるよ!平気でヤリ捨てして平気な顔してるって」

「なんで平気か分かる?」

来栖の耳元に口を近づけたら、肩がビクッと震えた。

「なに…」

「きみ達が望むから抱いてあげて何が悪いの?ヤリ捨てとか被害者ぶんないでくれる?必要ならまた求めればいーじゃん。俺は消耗品じゃないから、何度でも応えてあげる。俺の腕の中では下品になれるきみ達のこと、案外嫌いじゃないからね」

「頭おかしーんじゃないの!?」

「そうかもね?俺は消耗品じゃないけどさぁ、言っとくけどこれでも心は消耗品だから。お前らが必要無くなって寄り付かなくもなるくせに、体裁悪いからって俺のせいにすんなよ。こうでもしてなきゃ平気でいられるわけないだろ」

なんでこんなことを来栖に口走っているのか分からない。

こんなことを吐き捨てるほど、俺と来栖は親密なんかじゃない。
なんなら来栖のことは一度だって抱いてもいない。

八つ当たりしているのはたぶん、俺のほうだ。

「そんなんでよく生徒会長なんてやってられるよね…」

最低…ってもう一度呟いた来栖の消え入りそうな声には、「最低」って言葉にした自分に自信がなさそうだった。

「よかった。最低だって思ってくれて」

「は…」

「きみのこと傷つけたかもしんないけど罪悪感は持たなくて済みそうだから」
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