甘い夜更け。朝を憎んだ。
「そこまで嫌われてたなんて思わなかった」

「嫌いなわけじゃないよ」

「嫌いじゃない人に普通そんなこと言えないでしょ!」

「嫌いなわけじゃなくて、諦めてるだけだから」

「諦めてる?」

「来栖さんも他の子達とおんなじだって分かるよ。自分の欲や優越感を満たしたいだけの為に俺に媚を売る。今日参加してって言ってる時からずっとそうだっただろ。自分は他の女子とは違うって自慢したいみたいだった。だから協力してやったのに。俺だけが最低になるんだもんな?でもそんなことはどうだっていいんだ。心を求められたほうが面倒だしね」

「自分がなに言ってるか分かってんの!?生徒会長のくせに!」

「その前に俺もただの人間なんだよなぁ」

「は?」

「生徒会長である前に俺も来栖さんと同じ。ただの人間なんだよ。痛む心だって一応持ってるんだよ。本気で愛してくれるならそうして欲しいし、一過性の執着なんかじゃなくて生涯を俺にくれないかなーなんて思春期の男子らしく悩んでた頃だってあるよ。でもきみ達が望むのは俺のステータスや容姿だけ。絶望することにはもう飽きたんだ。クズに慣れなきゃ自分を保てない感情、来栖さんには解る?」

くちびるを噛み締めたまま俺をジッと見つめる来栖は何も言わなかった。

何も言わないのならもうここに留まる理由もなくて、俺は来栖に背を向けた。
後ろのほうで僅かに鼻をすする音が聞こえた。

泣いているのかどうかなんてどうでも良かった。

どうしていつもみたいにフラットな気持ちでいられなかったのか、自分が理解できない。
こんなこと俺にとっては日常で、あいつらが忘れてしまうことと同様、俺だっていつまでも憶えてなんかいないのに。

来栖の挑発にノッてしまったことが情けない。

世の中から消えてしまったほうがよかったのは夜乃とばりじゃない。
誰よりも、俺自身だったのに。
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