甘い夜更け。朝を憎んだ。
エアコンをつけたままだったから閉め切っていた部屋はひんやりと冷たかった。

外の暴力的な暑さなんて忘れてしまいそうになるけれど一旦エアコンを停めて空気の入れ替えの為に窓を開けたら、ムッと窒息しそうなほどの熱気が流れ込んでくる。
五分くらいそうしてから窓とカーテンを閉め切って、エアコンをつけた。

エアコンをつけていてもめんつゆはすぐにぬるくなってしまいそうだったからそうめんの上に氷を乗せていた。
ひとつ、つまんで口に放り込む。
口内がどんどん冷却されていく。

佐藤アマイから通知が届いていたことを思い出してスマホをタップした。

「会えませんか」

トークアプリ内に生徒会役員のグループがある。
そこからアカウントを特定して個人的に送ってきたのだろう。

先輩というか、生徒会長に初めて送ってきたメッセージにしては端的でそっけなくも感じるその態度が俺には清々しかった。

会えませんか、という言葉に対して通常抱くような色恋の気配を感じない。
それが夜乃とばり関連なのだろうということが分かりきっていて、「女性に誘われた」経験の中ではずいぶんと気がラクだった。
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