甘い夜更け。朝を憎んだ。
生徒会室で俺に夜乃とばりのことを吐露した時の佐藤の姿が脳裏に思い浮かぶ。

夜乃が失踪してからもうすぐ二ヶ月になる。
夜乃らしき目撃情報も有力な手掛かりも何も進展がないまま、夏休みも終わろうとしていた。

連日、夜乃関連の「報道」は加速していった。

週刊誌の一面を飾っていた「美少女失踪事件」の文字は、たった二ヶ月の間に「美しすぎる魔性の女子高生。転落と闇」へと姿を変えた。

夜乃への評価に対して佐藤が傷ついていることは想像できた。

「ひとりで泣いてんだろうな」

トーク画面を開いたまま、スマホをフローリングの上に置いて、独り言みたいに呟いた。

数十秒、そのまま点灯していたスマホのスクリーンは、まるであっという間に姿を消した夜乃とばりみたいにパッと消えて真っ暗になった。
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