甘い夜更け。朝を憎んだ。
自分が発した音の種類に自覚があるのか、佐藤はちょっと苦笑うようにして、またいつもの口調に戻った。

「特に同性からは反感買いやすいですよね」

「ほとんど逆恨みに近いけどね」

「ふふ。やっぱり朝之先輩はとばり寄りの考えをお持ちなんですね」

「″とばり寄り″って?」

「カテゴライズするならどう考えてもとばりと朝之先輩はおんなじです。私ととばりが違うように。先輩と私も、絶対に違うように」

「でも佐藤さんは夜乃さんの親友でしょ。絶対違うってことはないんじゃない」」

「違いますよ。誰がどう見たって。現にとばりが反感を買いやすいことに私は″逆恨み″なんて一度も思ったことありません。いつも″しょうがないじゃん″って思ってました。生まれた瞬間から恵まれていて、女性が欲しいもの全てを持っていて。だったらちょっとくらい人に妬まれたって平気でしょって思ってました。だから″逆恨みだ″って言った先輩はやっぱり″向こう側の人間″なんだって」

俺の前で夜乃とばりが失踪して、不安げに涙を流していた佐藤とは別人みたいだ、とは思わなかった。
佐藤や他者の中に巣食う妬み嫉み、自分が何者にもなれずにいる不安感は正常な思考だと思うから。
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