甘い夜更け。朝を憎んだ。
七月の晴天。
閉め切った生徒会室。

窓から見える運動場。
サッカーゴールも朝礼台も陽炎でゆらゆら揺れて見える。

一瞬、換気をしようかと窓に手を伸ばしたけれど、
もうここを出なきゃいけないから思いとどまった。

女子生徒の体温がやたらと高く感じて、
初夏の蒸し暑さも手伝って、肌がピリピリとした。

生徒会室にもエアコンはもちろん付いているけれど、女子生徒が望んだから稼働させなかった。

エアコンの冷気で俺の正しい体温が分からなくなるから、とかなんとか。

そんなもの、すぐに忘れてしまうくせに。

早く教室の冷房に当たりたかった。
背中に流れる汗が不快だったけれど、俺だって女子生徒の体温なんかすぐに忘れてしまう。

たぶん、明日になれば無個性な制服に身を包んだその顔も、声すらも。

じゃなきゃやってられなかった。

俺が目の前にいる時だけ散々求めてくるくせに、
事が終われば平気で通り過ぎていくような奴ばっかりだ。

片方だけがいつまでも憶えているなんてフェアじゃない。

だからやっぱりうっかり女子生徒の名前なんか聞いたりしなくて良かった。
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