甘い夜更け。朝を憎んだ。
「背中、痛くない?」

佐藤を起き上がらせると、あぐらをかくようにしていた俺の足の間にすっぽりと収まった。

「ちょっとだけ」

「そうだよね。ごめんね」

「全然平気です。それよりもうれしいから」

「うれしい?」

「朝之先輩が今は、私だけを見てくれたから」

「…かわいいね。純粋で」

「とばりなら誰かに固執しなくてもいくらでもいるんだろうし…平気なんだろうな」

佐藤の頭をゆるく撫でていた自身の手のひらがピタリと止まる。

こんな場所で女子を全裸にさせるわけがないけれど、下着をつけていない。
その事実を突然認識して恥ずかしくなったのか、佐藤は慌てて下着に手を伸ばした。

「夜乃さんは、やっぱりそんなことしないと思うけど」

「はい?」

「相手はいくらでもいるから手当たり次第に、みたいなこと」

「やっぱり…さすがにそうですよね。あ、でもあの人なら…」

そう言って口にした男の名前を、俺は知らない。

「ごめん。誰?」

「幼馴染なんです。とばりと、私も。他校に通ってるので先輩とは面識ないですよね」
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