甘い夜更け。朝を憎んだ。
来栖は正しい。
ちゃんと見抜いている。
だから一番ダサくてみっともないのは俺だ。

他者から人並み外れた扱いを受けるたびに腹を立てて、虚しくなり、期待することを諦めている、なんて、うそぶいているだけなのかもしれない。

「特別視」されることに固執していたのは俺自身だ。

見抜かれないように。

「本当の朝之蜜」を隠そうとしていたのは俺自身だった。

見抜かれないように。

来栖が心に触れようとしてくることが不愉快で堪らない。

誰も俺の心臓を掴むことができないのなら、ありきたりな男女の戯言なんかには何も奪われたくない。

他者が俺を特別だと祀るのなら、俺の心臓の中心に在るものも特別でなければならない。

じゃなきゃ今までの孤独は一体なんだ?

なんの為に心をすり減らして人を傷つけてきた?

その代償が結局「普通」に落ち着くのなら、全て無意味。

今すぐ死んでしまったっていい。
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