マフィアの弾丸





 (…まぁ、学生の頃とかは写真見ながら、もっと見て分かるくらい優しそうな顔の人なら良かった。って、思わなく……もなかったけど)



 仕方ない。

 多感な時期の感受性は否めないし。



 ただ、・・・・・カッコいい、
 とにかくかっこいいの。



 我ながら今では、家族の贔屓目なしにしたって父さんは顔の造作も
 均整の取れた恰幅も。

 写真に写るには
 もったいないぐらいのイケメンさんだったんじゃないかと。


 ほんとに思うから。



 ・・・・たとえ左目に、キズがあろうと。



 相当、当時はモテモテだったんじゃないだろうか。

 女の子はべらせて、楽しく
 真っ盛りピ➖➖➖してたんじゃなかろうか。




 ────…正直、子どもの頃の記憶ってほとんど覚えがなくて。

 ただ、自分が何を見てこの空気が苦手でこれがイヤで、とか。


 そう言った繊細な己の感受性は、
 なんとなくからだで覚えてる。



 だから、『カッコイイ〜!!』と周囲に()(はや)されても強面の
 父親がイヤだったし、やけに注目されるのも至極、(いと)った。



 家のなかでのルールや守りごとの厳しさなんかは、母さんのほうが割と精力的だったし。

 父親との思い出がそんなに無いくらい、私は長女だったこともあって、
 いつも『ちゃんとしなきゃ』『こうしたほうが良いんだ』と。


 よく、母方の祖父母にはとくにキツく言われていた、────そして重圧(プレッシャー)だった。



 それもあって、実は
 父さんのことがあんまり記憶にない。


< 101 / 140 >

この作品をシェア

pagetop