マフィアの弾丸





 あとは妹や弟は、下の子っていうのもあって
 父さんにはよく可愛がられ懐いてたって話もしてたっけか。

 私が、子どもながらにあまりに父さんと距離を取るものだから
 すごい寂しがってたなぁ、…なんて雑談も。



 母さんはくすくす、楽しそうに笑って、

 それはもう、
 とても・・・・幸せそうだった。




 ────…でも、
 ほんとうにそれっきり。



 以来、父さんの昔話はしなくなったし、私も母さんも。

 祖父母のところに居候になってからは
 てんやわんや喧嘩三昧の同じ毎日を送るようになって、


 頻繁に問題勃発はしながらも
 何年か経てばお互いに譲歩はしつつ距離感も保ちつつ。

 持ちつ持たれつで、
 現状に収まっている経緯である。




 ────「次は、◯△△□、◯△△□。バスが停まるまで、そのまま、お待ちください」




 ────…降車する停留所の名称が運転手さんのマイク越しに、車内に響いたことで
 回想していた脳内に終止符を打ち。


 停車したのと同時に、入り口の機器にICカードを(かざ)すと運転手さんに、
 「ありがとうございました」とお礼を告げ、ステップを降段。



 サーー、と靡いた自分の短い髪に、冷気が首まわりをすり抜けたので、肩を咄嗟に竦めてしまった。


 本格的な冬の寒気に身を縮めこませた私は、

 まだ明るい時間帯の、休日の
 住宅街を歩き抜けながらもう見慣れた土地や景観を視野に、取り入れていく。


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