マフィアの弾丸





 立ち止めていた足が、…一瞬、眩むように立ち竦んで。


 よく、考えても大してやましいことも何も無い、

 もしその場で母に尋ねられても、疑わしくする所以もない、



 ……ハズなのに、




 ────…なぜ、このときは
 引っかかったのか




 ・・・・・警鐘がする、鼓膜の奥のほうで。


 正体のわからない、

 知り得ない"ナニカ"が、
 ・・・・・私の知らない状況で蠢いているかのように。




 ────…それでも今さら。


 逃げ隠れして影から経過観察しようにも、いざという直面の後ろ楯も、

 母さんたちを護る術も想定せず仕舞いなものだったから。



 根拠のない第六感を、

 根拠のない言い訳で誤魔化して、




 (………じいちゃんばあちゃんたちにだけ。は、
 無断外泊、知られてないといい、)




 ────なんて。

 自分を(うそぶ)かせた言い抜けで
 ひとりでに、頭に植えつけると荒ぶる心の臓を宥めるように
 深呼吸を繰り出した。


 さながら、歩みを再開してちょうど、中間の十字路に差し掛かったところで
 視界に投影した高級車と、スキンヘッドの強面の男性が二人、




 そして────…、

 予感は的中。



 彼らが対峙していたのは、
 やはり、

 …母さん。


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