マフィアの弾丸
(………帰っ、……た。はず、じゃ)
アーウェイさんの話、では、もう…、
母のほうに寄越した部下は帰した、って。
「…………」
・・・・・疑り、深いだけ。
胡散臭さを感じるのもお門違い、・・・かもしれない。
でも・・・・・、
「っ、……」
がさ、り、
がさごそガサガサ。
私は────、鞄のなかに手を突っ込んで、捜し当てたスマートフォンから
連絡先をタップし無作法に、"おれ"と書かれた人名の通話マークを押すとコール音で彼を呼びだす。
普段、この男から電話があってもスルーしてしまうことが多いから、
アーウェイさんも出ないかもしれない、けど。
それならそれで良い、別に、
ただ、今、確認してみようとおもっただけ、ただそれだけ。
────…なんて。
こちらがこころを落ち着ける間も無く、ワンコールで『あンだよナンか用か』と、耳慣れした声が鼓膜に木霊したのには。
・・・・・若干、
素っ頓狂な声を上げそうになるのを無理矢理でも押し込めるに留めた。
いつもの、不愉快極まりない低音が、こんなにありがたくて安堵を齎したとか。
さすがに本人まえにしては賛辞できないけれども。
募っていた緊迫感もほんの少し緩和して助かった、と。
なんとか、震えそうになる声尻を押し殺して「ちょ、っと聞きたいことあって」────そう、言葉を選ぶように固唾を飲んで呟いた。