マフィアの弾丸
『────あ?なんだどーした』
歩調をゆっくり、進めていきながら、しだいに近付く自宅前にいる三人の姿。
黒光りする高級車のナンバーを、視線でなぞらえた羅列のまま頭に叩き込んで。
黒いスーツに身を包むいかにもな強面の彼らも視野に、取り入れつつ。
右手には右耳に運んだ、勘の鋭いアーウェイさんの、警戒気味な声を持ちこむスマートフォンを当てる。
なるだけ言葉を選べるように、脳内で聞きたい旨を噛み砕いて、咀嚼して。
「あの、…」とちいさく、接続詞で前置くと、
「さっき、…母さんに連絡入れるまえに、構成員のひと寄越した。って話、……しました。よね」
『あぁ、────それが?』
「帰った、って…」
『通達は入れてる。
それがどうし、────』
「────…あぁ伊万里。おかえり」
────…私に気付いた母さんが、かるく手を掲げたことで帰宅した私への挨拶とした。
私も小さな声で、応答するべく「ただいま」と切り返す。
同時にちらり、と視線を横にズラしてみるとスキンヘッドの彼らは、
────…一瞬だけ目の奥に、なにかをチラつかせ。
・・・・・けれどもほんの一瞬。
一瞬の空気圧はすぐに消え失せて彼らは、どこか恭しく私に向き直ると
頭を下げだしたのである。
「────失礼。今お帰りでしたか」
「……はい、どうも。
あ、の……まだぁの。いる、」
『あ゛?』
「家にいたから、…ビックリして。すみません、こんな事で連絡して。大丈夫で」
『────代われ』
「え?」
『いいから代われ』
右手のスマートフォン越しからアーウェイさんの唸るような、有無を言わせないドスの利いた声音が静かに、轟き。
それが己に向けてじゃなくても、さすがに怖気づくな。などと胸内で畏怖しながらも、
言われたとおり二人のうちの一人に、スマホを差し出した。
「失礼、お借り致します」
「あ、あぃぇ。はい、」