マフィアの弾丸





 映り込んだ目の端の、"人影"に、────…咄嗟に感情が揺れ動いてしまった。



 視覚も時に、余計なものを拾い上げる。

 要らぬ情報が視覚から自らを脅かしにかかるみたいに、、、。




 ────さっきまで、は全面フルスモークで車内は窺えなかった。

 それが現状、半分まで下げられている後部座席側の、フルスモーク車窓。



 そこから姿を見せた、
 車窓越しにこちらを静観してくる女性の存在。




 (………………ダ、レ………?)




 ・・・・・・秘書?

 財閥の御令嬢さん・・・・・?


 いや・・・・、

 そもそもカーフェイさんたちの正式な職業すら、



 私、・・・・・知らない、し。




 「────、Yes, understood.



 ……お嬢、」



 「────っぇ、…あっ。
 は、はぃ」




 車内にいた淑やかな女性に、気を取られていた私は、
 「お返し致します」────そうかけられた黒服の低い声に我に返り。


 男性の手から差し出された自分のスマートフォンを
 低頭しつつ受け取ると再度、耳に当てる。




 『あー…、悪ィ。お前ぇが帰宅するまでを見届ける手筈だったのうっかり、忘れちまっててな。いま引き上げるよう指示出しといたからべつに問題はねェーよ』


 「………………ぁ、あ、うん。そっ、か」


 『…あンだ、何かされたのか』

 「いっ、いや。何も、」



 それなら、いい。

 問題無かったら、べつに私が気にすることじゃない、


 ・・・・・・けど。




 「────では。これで失礼致します」


 「あっ、は、はぃ。ありがとうございます」

 「ありがとうございました」



 スキンヘッドの彼らの挨拶に、私と母さんも一度だけ低頭して、挨拶を交わす。


 私はまだスマホを耳に当てたまま、通話先も繋がりもった状態で『────オイもう切ンぞ』と。

 電話先から聞こえてくるアーウェイさんの苛々声にすら
 応じられない状態で身を、固くしていた。


 とりもなおさず直立不動で、
 彼らが黒塗りの高級車に乗り込んでいく姿を訝しく、見定めいく。


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