マフィアの弾丸





 それが居心地がわるく、肩身の狭い胸中の要因ではあるのだが。

 入り立ての頃から、よく教えを説いてくれたのは主に、彼女で、実はかなりお世話になっていたりする。



 特別、仲が良い。というワケではないけれど、稀にこうして
 昼食や、帰りを共にすることがしばしばあるぐらいには、仲が良い…。と言えるのかもしれない。




 「海外(かいおく)さんあんまり、食堂に来るイメージなかったけど。いつもどこで食べてるの?」




 …そんな独白を、脳内で(つづ)っていた私の耳に、伊周(これちか)さんの疑問の()がふと、入り込んで。


 それに答えるべく、

 お弁当に向けていた視線をあげてみると、豪快に、けれども上品に麺を啜りながらの彼女が、こちらを不思議そうに見詰めてきていた。




 「……あぁ、…ぇっと」

 「言いにくいならべつに、良いの。海屋さんの秘密の場所?ってことなのかしらね」



 どう、切り返そうかと吃ってしまっただけに、それを『言いにくい』と判断させて
 しまったらしい。

 特に、そのつもりは無かったのだが、・・・・・・。



 「あたしも一人でいたい時もあるしね。人それぞれよ」


 「……伊周さんも、…一人でいたい時って、あるんですか?」

 「そりゃああるわね。仕事やプライベートや、家族や、彼や。人と関わるないし関わらない、どちらでも自分の時間ってのは必要なものよ?」


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