マフィアの弾丸





 「疲れるのなんて、当然の摂理よ。どれだけの息抜きをしたとしても、仕事にしろ趣味にしろ頭をフル稼働させているんだし、少なからず力を入れてるんだから

 別段、気にすることじゃない」



 自分の存在も、感情の渦も、ぜんぶ受け入れてあげたらいいのよ自分自身がね。────そんなふうに、

 あっけらかんと口角をあげながら彼女は淑やかに、自論を口語にして。




 ・・・・・・あぁ、このひとは、たぶん私が想像するより遥かに大人で。

 そして
 表面(オモテ)には見せない苦悩や苦境でもがいて、もがいて、見つけ出せた
 道をきっと、イマ歩んでいるのだろうな、と。



 あくまで、想像だ。

 勝手な自己想像だけども納得すれば、重かった己に対する狼煙(のろし)が、鎮火するような気さえした。


 力んでいた肩も、すとん────、脱力していくのがわかって。




 「人間、…なにもしない。なんてこと、ないでしょ?たとえ遊びでも、何かしらからだを動かしたり、頭を使ったり周りに気を配ったり」


 「…ぁ。たし、かに」

 「全くなんにもしない、なんて事、ないと思うのよ。だから疲れるし、怒ったり嬉しかったり、喜怒哀楽するんじゃない?」


 「そぅ、……ですよね」


 「……自分だけは、誰になんと揶揄(やゆ)されても自分の味方でいたいじゃない。相手を傷付けなければ、あたしはあたしでいることを誇りに思う。ソレってステキな事じゃないかしら」


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