マフィアの弾丸
────…そして例のごとく、そんな私たちの仲裁にはいるのが、
「…もう良い。離してやれ」
「────チッ」
低くて、どこか有無を言わせない、カーフェイさんの制止の声に、
渾身の舌打ちを響かせたシルバーブルーの男が、くゆった自身の髪をガシガシ、引っ掻きながら
いわれた通り離れていくと、
「…甘ぇんだよお前も、コイツに。寝てるときどうせ引っ掻いちまうんだからわざわざ、おれがあの手この手で直に、塗りたくってやるって言ってんのに」
・・・・・いや、
「…「あの手この手って」、」
「知りてぇか?」
「いや結構」
「即答すんなや」
一矢報いるような私の切り返しにはさすがの彼も、
ピキリっ。と額に、青筋を立てた様子だったが。
すんでのところで思いとどまったのか、眼前で殊更盛大に、ため息を放ってドカリ、と。
(わざわざ)私の隣りに場所移動し、腰を下ろしたシルバーブルー頭の男(────もう、そう呼ぶことにする)は、
背面のシートに背中を預け、長い脚を(絶対、わざとだ)こちらに、
寄せつけるようにして組んで、煙草を吹かしだすもんだから、
私も嫌がらせで、「…煙草ヤメテ臭い。喘息」と嫌味をブッ刺すことだけは忘れない。
「うるせ。ぺたんこが。おれに指図すんな」なんて、いつものごとく
小言は吐くものの。
本当に、私に害成すことは彼は絶対、しないと分かっているので、大人しく
持参したお昼ご飯を開封することにした。
・・・・・現に、隣の男は直ぐに、口に挟んでいた煙草を
吸い殻に仕舞ってくれたし、
(…と言うか。直ぐ、鎮火するんなら買うだけもったいない、と思わない事もない。けど、ヘビースモーカーらしいし)
・・・・ちょっとだけ、
申し訳なく思わない事もない、ほんのちょっと。
そう、ほんの一握りぐらいは、
申し訳なく、・・・・
「チッ。ほんっっっと女の風上にも置けねぇ、なンだよその乳は。萎えんだろーが男のブツが。もっと豊胸しようとか思わねェのか」
「…」
「ってかお前。いい加減、ブラジャー買えよブラジャー。25にもなって、スポーツブラとか胸がかわいそうだろ。だから貧乳なんじゃねーか」
「っ失礼な、………。ぶ、ブラジャーはに、苦手。なの窮屈で」
「ハァあ?お前、……マジで女か?性別詐称してんじゃねぇだろーな?胸のカタチ崩れるとか、フィットしねェとか色々あんだろ問題が」
「……別に、無い。貧乳で困ったことないし」
「オイ。いまの発言、世の中の男女引っくるめて敵に回してんぞ。ブラしてないとか、女の沽券にかかわるから今すぐ、前言撤回しやがれ」
「……常々おもうけど、そもそもなんで男のあなたが「女の沽券」を語るんですか」