マフィアの弾丸





 お弁当のおかずを、おもい出したように口に運んでいきながらも
 目の前にすわる彼女の言葉は、どこまでも温かく、そして優しかった。



 雅やかな微笑を、口のほとりに乗せて言葉を連ねていた伊周(これちか)さんは、最後の
 麺の一口を啜ると『はい、終了』と言わんばかりに、話題の転換を図り。

 「暗いわね、空気が」────…なんて
 私がもちこんだ重々しさをまるで、一掃するべく冗談めかして茶化すように口にしたので、


 おもわず。

 私も「…すみません」と苦笑してしまったのだった────…。




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 ────…誰かに話すというのは、存外、心もちとしては少し、
 ラクになるらしい。



 すべてのモヤモヤを払拭できたワケでは無いまでも。

 ただ、独りでに抱えているよりは、幾分か誰かと共有した気になって、ほんのちょっと、
 立ち止まってた場所から前進した(────ような)気がする。


 午後の仕事に取りかかる時分も、
 鬱屈とするんじゃないだけでも多少の救いだ。



 ・・・・・私は、今はまだ弱いままだけれども、伊周さんみたいな自立した女性像は
 とても、憧れる。



 彼女のように、なってみたいな、って。


 誰かの助けは必ず、生きてる限り要するもの。

 でも上手く自分なりに調和して、助力を借りて、私も力添えて。



 そうして自分で社会のなかを歩んでいけるようになるのは、────…ずっと、




 落ち
 込んでいた時期の、

 夢だったから────…


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