マフィアの弾丸





 ────…のだが、




 「…………………っあ!」




 ・・・・・・忘れてた、

 完全にド忘れしていた。



 ハッ!と降りかかったように回想し、慌てて手提げ鞄のなかを漁るけれども
 目的物である通帳は、見つからず。

 どこかで落とした?!いや、さすがにソレはまずいでしょっ!!!────そう、目をキョロキョロ、
 頭もフル稼働、そして思考回路をショートさせてしまう始末である。



 (……………いや待って。

 確か、朝はあった。ちゃんと始業まえにロッカールームで2回も確認したし、)


 うんうん、唸りながら。



 ……となると、職場を出る・まえ?


 今日中にお金を下ろさなきゃいけないワケでも無し。

 ただ、時間にゆとりがあるなぁ。なんて踏んで、いつもなら月初めに下ろす母さんへの、
 負担の軽減のための、お、お金をっ。



 全財産の通帳をっっ、!?!



 と、
 そこまで脳が分析しだすと焦慮と危機感ばかりがメンタルに、
 働きかけて。




 (あぁ〜もうっ。なんで、
 よりによって帰宅まえに失くしちゃうかな)




 たぶん、ロッカールームだ。

 ほんとについ、さっき、ロッカーのなかを整理したから。


 そのときに恐らく・・・・は、ロッカーのなかに仕舞っちゃったっけ。




 取り急ぎ、踵をかえして駅のホームを走り、駅員さんになんとか
 事情を説明してゲートを通してもらうと。

 これでもか!ってくらいの全力疾走で来た道をもどり、職場のホテルまえを
 早足で通過しようとする、




 ────…刹那、




 (……………………あれ、)


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