マフィアの弾丸





 彼女はシンプルな装いの後ろ姿でも、様になる洗練された歩調を、そのリムジンの後部座席まえで止めると、



 ────コンコン。


 腰をすこし屈め、なかの人へ合図を送るように控えめに、ノックをする。




 ・・・・・既視感。



 それはいつも、私がしているような行動と、どこか類似していて。




 キュ、と眉間が無意識に寄ったことを自覚した。



 ────…冷たい寒空の下。

 キンキンに冷えた冷凍庫のような風を直に、目に受ける傍らで、
 それでも瞳孔を凝らしながらはいってくる、目先の光景。



 その後部座席扉が、
 ゆっくりと開かれたのと同時────、


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