マフィアの弾丸

モノローグ






 ────…とある迎賓館(げいひんかん)の、エントランスにて。




 西洋の技術で建築されたのだろう、豪奢(ごうしゃ)な門扉は


 迎賓館の壮大な敷地内を、囲うようにして造られ、玄関ホールへと繋がる
 石畳には、上品なパラソルと会食やティータイムを愉しむための、

 円いテーブルがいくつもそこに、点在していた。




 門扉外には、黒服を着た重厚なSPや、黒光りするロールス・ロイス、ポルシェ、

 Aクラスと思しきウン百万はしそうなレッド色のベンツや
 リムジンなどの高級車、外国製品の車種が何台も。




 一体、どんな国家賓客(ひんきゃく)が来日すると言うのか

 それはとても、ものものしく、そして、奮然としたように仰々しかった。




 至るところに、芸能人や富豪主、長者たちが身を寄せ合い、
 主婦の井戸端(いどばた)会議のごとく、
 ヒソヒソと小首を傾げては。



 まだ見ぬ賓客を、
 今か今かと待ち受けている様子で。




 …しかし、富者の集まりと言うのは、なにぶん、どこまでも駆け引きを重んじる社交場であることが、多いらしい。




 出席者のなかには素封家(そほうか)や成金、大資本家や大企業の権力者、
 またアラブ連盟関係者各位から、貴族や華族出のご令嬢・ご子息まで。



 さまざまな財力に富む者たちが、────"この日"、宵前のパーティー会場に参列し、

 アフタヌーンティーやワインを(たしな)みながら
 愉しんでいる光景は、どこか、互いに振粛(しんしゅく)し合っているようにも窺えた。




 今宵は新月(にいげつ)────…。




 日本の、某迎賓館に、すでに集結している彼らのなかには(────案内を受けた大豪、ビリオネアなどは省き)

 招待状はおろか、
 その大半の出席者が広報されていない者に等しい。



 しかし、いずこからか噂が噂を呼び、こういう奇絶(きぜつ)な場合にのみこそ
 ひとは、
 鼻を利かすことをとりわけ得意とする。




 ────ざわざわとしていた大衆が、一台のリムジンが到着したことにより
 一瞬にして、しじまを取り戻した。



 井戸端会議の途絶(とぜつ)




 それはまるで、────これから降りてくる者たちが
 彼らの、
 絶対的君主であるかのように

 その静けさは、
 異様に気味が悪かった────…


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