マフィアの弾丸
最初に車内からステップを降壇したのは、────人間離れをしたシルバーブルーの髪を、無造作に外跳ねさせた長身の男。
無造作に外跳ねと言っても、それは言葉のあやに過ぎず、言うなれば、適度に非常に美しくウェーブを持たせた、ぜいたくなシルバーブルーの髪、と言える他ありえない。
冬の夜風が彼の、柔らかな髪を祭り上げ、惜しげもなく、猛烈な美貌が大衆のまえに、露わとなった。
深い宵のなかでも滑らかに輝く、シルバーブルーの髪の影に隠されていた、白皙を縁取る玉のような素肌。
すこし吊り上がり気味の目許は、きれいな楕円を描き、純銀色の眼睛を如実に、
引き立てていた。
眉頭に波をもたせ、眉尻側を吊り上がらせた凛とした柳眉。
高い鼻梁に、きっぱりとしたダークレッド色味の薄い紅唇。
口端に挟まれた煙草は紫煙を燻らせ、男の口元を、さらに、
装飾しているようだった。
猛烈に美しいのだが、決して甘さはなく、かつ、
どことなく野生的で女性的ではない。
右耳にはシルバーのイヤーカフと、ひと粒大のピアスが
神々と光っている。
ストライプ生地である高級なスリーピーススーツ、キズひとつない革靴を
毅然と履き、着こなせる
ほどにしっかりと鍛えられたその肉体美は、服の上からでも窺い知れよう。
綺麗な男だ、と────誰かが呟いた。
そしてそれを皮切りに、ドミノ倒しのごとく、撫然と眺めていた人々の反応に
静閑な活気が戻った。
────…しかし間を置かずして、もう一人の男が彼に引きつづき
降車すると、
大衆は、まったく口を開くことすら、歯が立たなくなってしまったのである。
最初に降りた美丈夫と、身長差はさほど変わりない。
だが、姿を現しただけで圧倒的な常人離れした"ナニ"かが、彼らを取り巻く。
ザク────ッと。
一級品の革靴が石畳の上へ、舞い降りたかのようであった。