マフィアの弾丸
いつ、いかなる催事においてもカーフェイ様の傍らには、必ず、
黒服のSPと、アーウェイ様が控えていらっしゃる。
そうであるからして、安易には
彼の方に近づくことすらできないのが催事場での常。
────リー・アーウェイ。
カーフェイ様とは旧知の仲であり、
仕事上でも側近として手となり、足となり彼の方を支えていらっしゃる。
・・・・・非常に
忠義心にあふれた男だ。と。
しかし────…。
大臣から謹聴した話によると、
彼は多忙なカーフェイ様の代わりに、『殺し屋』『始末屋』としての異名をもち。
その背面では、制裁対象を収監し、重罰をくだしている。との噂も聞く、と。
交流を深めたいのであれば、(────薦めはしないが)その旨、服膺し気を赦さぬよう。
・・・・・そう、
青褪めたお顔で苦言を呈されていたことを。
・・・・だけれど今宵は、
"彼女"も参列なさっているからか。
歴然として男性だけにとどまらず、女性たちの士気さえ
上げに来られているようにも窺える。
────「アレはっ…!松泉寺家のご令嬢ではないか!?」
────「ハリウッドに渡米されたのではなかったのか!?」
浮き足立つのはおもに、男性陣諸君。
彼らは表情に嬉々とした色をうかべ、その様相はあどけない面立ちへと
入れ替えていく。
────「いやぁ〜しかし…、いつ見ても麗しいお方だ。是非お近づきになりたいもんだなぁ」
────「ハッ!よしてくれないか西条殿。あの方は東洋の女神だ。儂らごときが触れ合っていいお方ではありますまい」
────「ははっ。…あぁ、違ぇねぇ」
ひそひそ、と並べたてていらっしゃる賛辞はどれもこれも、おべっかの通りである。
紳士方は蓄えた自身の顎髭を撫でおろしながら
美辞麗句で"彼女"のことを誉めそやし。
一方、女性たちは一様に距離をとった輪のなかで
遠くから脚光を浴びている、
この御三方を、ただ、────我を忘れてうっとり、
惚けるばかりの様子であった。
────「…あぁ、なんてお似合いなのかしら」
────「茉美子様は私たち女性の鑑だわ。彼の方々と肩を並べても、忖度なくお似合いだと言えますもの」
────「ほんとねぇ」
────「ほんとよぉ」