マフィアの弾丸
"彼女"────松泉寺 茉美子様のことを。
ただの私欲で虫が好かない。などと嫌疑をかけるのは
(少なくとも、)この会場内では、
わたくしだけに限られることではないかしら。
・・・・彼女のことを、
ライバル視しているとは言えやはり、心持ちは宜しくない、
────松泉寺 茉美子。
彼女は、松泉寺財閥の1人娘で、
社交界でも群を抜いて
なまめかしく、華やかにお美しいお方であらせられる。
現在は、世界有数のファッション業界を誇る、本場イタリア・ミラノで
モデル活動をなさっていらっしゃるのだとか。
それがゆえに、必然と富豪家や大使館など、(主に、紳士であれども)ひそひそと
好ましくない雑談をひけらかしている事には。
────…実のところ
気分が悪いと言わざるを得ない。
わかっている、なんだか矛盾した感情だと。
烏滸がましくも、茉美子様をライバル視しているのとは相反して、
憧憬しているからこそ、下卑た目で彼女のことを
見ないでほしい。
(…なんて品のない、……。なんでも賛辞すれば良いというものでは無いと言うのに、)
見え透いた下心がありありと感じ、どうしたって茉美子様を
不憫に見せてしまっているようで、いただけないわ、と。
わたくしは奥歯を噛み締めるしかなかった────…。