マフィアの弾丸





 そこまで頭のうちで順序立てて、────あぁそうだわ。この男は下僕なのよ、と自分に落としこむことで、すぅーーっ、と逸っていた肝も、ようやくして据わっていくのを感じた。



 それでも、まだ気に入らない気性は収まることを知らないので、
 わたくしは「竹倉」と、声に棘を刺して名を呼んだ。




 「すこし、……黙っていて頂戴(ちょうだい)、駄犬の分際で。気分がすぐれないわ。今すぐ"首を斬られたい"の?」


 「……いえ、出過ぎた真似を」




 しかし、わたくしが本意気で怒を滲ませると(たちま)ち彼は、静々と礼儀を(わきま)えだす。



 "首を斬る"────それは、その言葉のとおり首を()ねることを意味している。

 裏切り者や、船岡ホールディングスの(あだ)となる者には制裁を。



 くわえて、上に楯突く者は、それだけで合切(がっさい)、裁かれる理由に値する。



 それが、わたくしの一家が代々、経営手腕として地位をキープして来れた所以(ゆえん)にもあった。



 わたくしはひと息ついて、今度こそ侍従を黙らせ、視線を外の景色にうつしていくと、

 到着まですることも無いので見慣れない街中の雑踏や、ビルディングに、白けた目を送ることに費やした。




 あぁ・・・・・哀れだわ、

 庶民は。


 なぜ、彼らはもっと効率よく社会を動かそうと思考しないのかしら。



 そんな愚問を、胸のなかでのみ噛み砕きながら、通り過ぎる人波を俯瞰(ふかん)していたわたくしは、




 ────のちに

 思い知ることになる。


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