マフィアの弾丸
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 ────…そのリムジンは、ある、質素な児童公園の(へり)に車体を横付けにし、停車された。



 寒々しく。

 ベンチのみしか設けられていない、
 侘しい公園。




 (……こんな場所に路上駐車してまで急いでいた、って。いったい、どんな急用なのかしら)




 そんな疑念が浮上する
 のとおなじくして。


 いえ、そのような事を心配するまえに、もし、付けていたことを()の方に知られてしまったら・・・・?



 そう咄嗟に、危惧したわたくしの苦慮は間髪入れず心配するほどの事ではなかったのだわ、と安堵する。

 いつとはなしに、すでに、竹倉が手回ししてくれていたものだから。




 このような折にいつも、おもう。

 ・・・・ある種、敬服する。と



 彼があらかじめ運転手に、反対側の道路際へ、停車させる指示を出しておいてくれて正解だった。




 ひとまず────、。


 これ以上の移動はないものとみて、間違いはなさそうね。



 ひとりでに、そう納得すると、彼の方の、次の動きがあるまでは、

 車内から様子をうかがってみることに徹しよう。そう、おもい至り、約数分────。



 待ってみたのだがどうやら、今すぐには、リムジンから降車される気配は(よう)として感じられない様子だった。




 腕時計で時刻を確認すれば、
 すでに20時すぎを指している。




 「…ねぇ、竹倉。ほんとうにあのリムジンに、……アーウェイ様がご乗車されているのよね?」

 「えぇ間違いはありません。車のNo.(ナンバー)も"○○◯905、△10-94"。ハッキングした彼のスマートフォンのGPSですが、あのリムジンに乗車していることは確かです」


 「降りられますか」と。



 わたくしが疑り深い態度をとったものだから、竹倉はいちど呆れたように
 ふぅ、とため息を吐き、そう促して。



 わたくしも、ここからではまったく、状況が読みとれない事には歯痒いので。

 居ずまいを正し、先に降車した竹倉の手を取ると、深くなりつつある薄闇の外へと、足を向けることにした。


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