マフィアの弾丸
彼はすかさず、わたくしのからだが冷えないよう、肩にコートをかけてくれる。
そこで、ハタと気付いたら・・・・、そう言えば、ドレス着のままここに来たのだったわ。と。
両腕をさすりながら、
自身がいかに、慌てふためいていたか。
まったく、騒々しいったらないわ、
なんてたまらず
白い息を吐きだしてしまった。
それにしても────…冬の20時となると、やはり、夜の帳が下りるのは早いもの。
薄ぼんやりとした街灯と、公園のすぐ傍には、国道をまたいでコンビニエンス・ストア、郵政局やスーパー、パチンコなど。
それなりの軒並みが、宵にもかかわらず、盛んに明かりを灯しているおかげか否か、
それほど、景色に暗澹とした感じは、見受けられない。
しかし、そのなかでぽつねんと設けられたその、ベンチのみの公園は、どことなく物悲しげであった。
公共の、児童公園の場として提供するには、あまりに素朴で。
・・・・・ぶらんこや、すべり台くらいあるのならば子どもも遊びやすいのだろうに。
なんて、てんでしょうの無いことで憐れみといっしょに、
物思いに耽るように嘲笑したわたくしの、行き過ぎた目のまえで。
入り口のところに停められた
リムジンから、────…ようやく動きを見せた男を、ハッ!と。
いそいで視野にとらえ直した。
「お嬢様、」
「…えぇ」
暗闇が視界を奪うなか、わたくしは目を凝らして、その姿を追う。