マフィアの弾丸





 ────闇夜に映える。



 総じて人間離れされたその美貌がなめらかな所作で、リムジンから降壇(こうだん)なさった。




 寒風にすら、(いたず)らにも宙を、ふわりと泳がせられる、
 藍鼠(シルバーブルー)いろの無造作に外跳ねにされた、高品質のようなヘアスタイル。



 さわり、と靡いた柔らかげな前髪。

 そのしたには、惜しげもなく露わとなった、閑雅(かんが)な雰囲気と野生味のおり混ざった(おもて)



 ティアドロップ型のサングラスをかけて降りられた彼の方(アーウェイ様)は。


 その、一点物であるブランドもののサングラスを無作法にはずされると
 ベストの谷間に雑に引っかけ、美しい純銀アイを別方向へとむけられた。



 わたくしも同様にして視線の先を追ってみる────、


 すると…────、



 横断歩道を跨いで、向こう側にある階段から、誰かが下りてくる、ぼんやりとした恰幅をなんとなしに窺うことができた。




 (…どなた?あの子は、)




 ・・・・この距離からでは、
 正確には皆目見当もつかない。

 ただ・・・・
 女性であることは、一目瞭然。




 「あの女性(かた)ですね、ウォン総代表が懇意になさっているというのは」


 「────あの、子が?」




 傍らからの竹倉の助言に、もう一度、目をほそめて見詰めるけれども、正直なところ、コレと言って秀でたものは見受けられない、凡庸(ぼんよう)な女性だと。


 わたくしはひどく、絶句した。




 ・・・・・だって、そんな。

 冗談でしょう?


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