マフィアの弾丸
遠目に目を、何度、凝らしてみても首を傾げるほどの。
竹倉の言ったとおりの、その女性は、ごく、────…平凡。
年の頃は、彼の方と比べると、いくつか離れていそうであろうけれども。
たぶん、面立ちからして
わたくしと然程、変わりないお年頃ではないのかしら?
ふんわりと首周りに、円を描くように切り揃えられた黒髪は、短く。
真ん中分けにされた前髪は、彼女の丸い顔をさらに、小顔に引き立てているようだった。
膝丈まである烏色のジャンパーをまとい、すらっとした脚と小柄な恰幅。
黒のパンツを履いた彼女は、律儀に、横断歩道の信号が青になるのを、ジィっと待っている。
宵に近しい時間帯。
車通りも少なくなった国道線で、彼女よりあとに走ってきた通行人は
信号を守らず、横断して駅のホームへ向かったというのに。
(……ずいぶんと、生真面目そうな子ね)
わたくしたちとは瞭然、毛色がちがうタイプ。
だからと言って、そこいらの庶民と馴れ合っている感じ。とも言いがたい、・・・・。
『どことなく著しく、
系統のちがう少女』と形容する他、言いようがなかったことにも一驚してしまった。
「現在はアルバイトをされているようですが、ごく最近────…それも数年前までは家庭事情に問題があって、休職していた時期もあったみたいですね」
「あぁそう、……だからなのね」
・・・・・だから、『普通』なように見えて、『普通』ではない雰囲気をもっているのだわ。