マフィアの弾丸
家に、帰ったからと言って、祖父母のところに居候の身である分、
安穏に休めるワケでもないんだけれど。
それでも今では、ある意味であそこが私にとってはやっぱり、息を着地させられる家だ。
・・・・もう、住み馴染んだ場所。
作業をつづけていきながら、私はふわふわする頭を、なんとか集中させて17時まで踏ん張る。
しんどい時ほど目は、ひとの機嫌ばかりを観察してしまって、自分を休ませたいときほど己の意思とは反して、てきぱきと動いてしまう。
そんな自分と戦いながら、ようやく終業のチャイムが鳴りひびくと、
「海屋さん、お疲れ様」と社員さんたちに挨拶をされ、
私も「お疲れ様でした」と頭を下げて自分の分のタイムカードを押す。
エレベーターに乗った途端、その箱が上階へと浮上していく独特の感覚に、
胃が竦み上がるような気持ちわるさを覚え、私はウッと唇を引き締めた。
眉間に皺が寄り、必死に歯を食いしばって我慢する。
(・・・・こんな場所で、吐いたら。恥ずかしい、・・し、死ぬ)