マフィアの弾丸





 ・・・・その事実にも疲れてしまった。




 母方の父母(────私にとっては祖父母)のもとに居候する身になって、

 今でこそは、喧嘩することや
 キツく当たられることも最小限、少なくなったのだけれども。



 あそこに来た当初は、厄介者扱いのようにされてしまったことも、
 しばしば。




 父が夭折(ようせつ)してしまい、当時、未成年であった私や妹、弟たちに経済力なんてもの、あるはずもなく。


 母さんひとりでは、私たちが学校を卒業するまで養っていくには現実的に考えて
 とても、厳しかった。



 ただ、それでも行き場のなかった私たちを、曲がりなりにも
 家に置いてくれたのも、事実。




 「っ〜〜、……はぁ、」



 こぼれそうになる涙を、深呼吸を2回して凌ぎ下唇をかみしめた。


 エプロンをはずして鞄に突っ込み、ジャンパーを着用しながらロッカールームを退出した自分の足取りは、

 ────…ひどく、重たい。



 ふたたびエレベーターに乗り込み、1Fに着くと、複雑に入り組んだ経路をとおって
 事務室のところまで歩いていき。

 守衛さんに会釈してのち、首から吊り下がる、社員証でセキュリティーを解除して出口をでる。


 ふわ、と外気が首もとを取り巻くのでわずかに、肩を竦ませた。




 (……っはぁ、寒い)




 家に帰れば、或いは休息を得られるのか。



 ふつうのひとたちは、父親がいて母親がいて、兄弟がいて。

 そしてそれは、『家族』という枠内と慣れた住まいがあることが、まず、前提にある。




 ・・・・・・でも、
 私には、私たちには、持ち家がない。

 父親は死別してしまった・・・・・・。



 あの頃は当然、マンションやアパートを借りる余裕なんてまったくなくて。


 だからと言って、現状、年老いた祖父母のもとを出るという選択も、
 いまは出来そうもない。



 だから私たちは、あの家に帰るわけなのだけれど、


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