マフィアの弾丸





 §




 ────…ボーン、ボーン。と重たそうな昼休憩の(チャイム)が鳴る。




 時刻はちょうど、
 13:00を報せたところ。




 各々が、定型文句の「お疲れ様です」を締めの挨拶に、
 快い会釈(えしゃく)をしていきながら、私も「お疲れ様です」と応答して
 作業フロアを、退く。




 必要な持ち物だけを持参し、
 職員通路の階段をかけのぼっていくと、警備室といっしょに、
 警備服に身を固めたおじさんが窓口からいつものごとく、
 静かな相槌(あいづち)を打ってくれて。



 私もそれに、
 軽く、低頭して玄関口を出ると、
 冬の寒風がヒヤッ、と首もとを取り巻いたので咄嗟に、
 亀のごとく、首をきゅっと竦めてみせた。




 ・・・・・寒。

 そう言えば今年、温暖のせいか寒波がくるの遅め、ってニュースで言ってたっけ、・・・・。




 もう、気付けば暦は12月。

 「寒い…」とは言え、まだ、気温はマイナスにも達していない現状。




 ふさふさの、ファー付きフードのジャンパーを、しっかり着ても、すこし暖かい。と
 感じるぐらいだから、
 どちらかと言うと、暖かさに慣れすぎて
 からだが付いていけて無い、というほうが逆に、しっくり来る。



 そんな、割とどうでも良いことを頭の片隅で、ボソボソ
 独白として呟いていたら────、




 (はす)向かいの、横断歩道を渡った先にある、ベンチのみの、
 ヒッソリとしたアーチ型公園。




 その、真反対側の入り口に、
 このご時世でありながら堂々と路上駐車を横行している、
 一台の黒塗りの、



 …それも絶対、お高いであろう『リムジン』というブランド名の車種が、
 視界に、突飛な金額かのごとく、飛び込んで来て

 思わず。




 ハァ…ーー、と。もう、何度目かもわからないため息が溢れた。




 ・・・・・いつになったら、辞めてくれる
 かな。路上駐車、




 毎度毎度、忠告(したくなくても)してしまうこちらの身にもなってほしいが、…。



 一度だけ、ほんとに警察にお世話になったことがあってから、一般市民としては
 肝を冷やす思いだ。




 ────…警察のひとも、
 あの人たちがどういう職に就いているかは凡そ、
 見当はついていて。



 そしてそう易々と、
 一警察官では、介入できない立ち位置にいるということも知っている。


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