マフィアの弾丸
────寒気が、頬の肌を刺すようにながれて。
ほう、と吐いた息が白い煙と化して空気中に溶けて消えていく。
時刻はまだ、17時を越したところ。
帰宅するころには、18時を過ぎるかな。
でも、・・・・・。
(……今日、は。帰りたく、ない…。ひとりで、誰にも邪魔されない場所で、
身を潜めてたい……)
しかし、そんな意中は私の過ぎたワガママでしかないことも。
よく、わかってる。
いつものように、ホテルの裏口から出た私は、
なんとなしに、道路の斜向かいにある川のほうを見た。
寒々しく、すこし暗くなったそこは、宵闇色の水面が、電灯や、大規模なコーヒーチェーン店、建ち並ぶ店頭などから漏れでる灯りで、ゆらゆらと表面を泳いでいるように見える。
・・・・私も、あんなふうに自由に泳げ、たら・・・。
どこか・・・遠くのほうへ、いけるのに。な・・・・、
なんて、どうしようもない馬鹿なことを考えてしまった自分に、また。
嫌気が差した。
鳴り止まない偏頭痛に、頭を俯けながら。
とぼとぼと歩みをすすめた先には、十字路に別れた大通りがあり、信号が変わるのを待ちながら、ふたたび、こめかみに指を充てがった。
国道の横断歩道を渡れば、向かいには下りられる階段があり、
そこを下りていくと駅へとつながる歩道橋が堂々と待ち構えている。
そしていつもの────…、
お昼を過ごしている公園も、斜向かい側に。
(…今日、連絡した。し。……会うことない、か…)