マフィアの弾丸
こんな、人通りも車通りも過密しているこちら側に、あの目立つリムジンが停車すれば、さすがに人目につき過ぎるのでは?
たまに、彼らは、突拍子もないことを言ったりやってのけようとするから
私もどう、反応して対応すれば良いものか、返答に困る。
────…まえにも一度、たしかあった。
まだ、今よりは親しくない、出会いたての頃のハナシ。
何も、『表通りじゃなくて、もっと人目につきにくいところに駐車して待ってくれたほうが、そちら側としてはラクなんじゃないの?』と。
明らかに、人目の注目を集める類いの人種。
明らかに地位も上で、SPや黒服のひとたちを従えているような、お偉い上層部でもあるのだろうことも想像に容易い。
一目で判るくらいに、カーフェイさんたちは、たぶん、偉大者であるという事実。
現に、アーウェイさんには、『誰のために迎えに来てやってると思ってる』とかなんとか、小言を言われつづけているものだから、
反論して、売り言葉に買い言葉を公言しちゃったという節もあるが。
でも、・・・・・なら、なぜわざわざ。
私とお昼を過ごすためだけに、ご立派なリムジンという車体を公園に横づけにしてまで待ってくれようとするの?
尋ねても明確には答えてくれないので、あんまり、気にしないようにはしていたけれど。
(……たしかに、リムジンなんてものの車内に乗り込むところを仮に、職場のひとにでも見られたら、驚倒されそうだし。何言われるかもわからない。という不安要素だってなきにしもあらず、だが)
それなら・・・・、どうして関わって来ようとするんだ?
ワケがわからない、・・・・・・。
「……はぁ、」
ひとつだけため息をこぼして、それでも、雑念を一掃するように信号を早足でわたり、階段をゆっくり、駆け下りていく。