マフィアの弾丸
下りていく道すがら、視線を遠方にむければ、すでに、いつもの公園の入り口真横に、見なれた高級車が路上駐車されていて。
そしてこの寒い中なのに。
アーウェイさんが珍しく、車体に凭れかかり、外で待ってくれていたのだ。
(…、なん、……で。いるん、だろ……)
私が階段から下りてくる様を、ジ、と見詰め、凄絶なまでに美しいその姿と、絹糸のようにウェーブを描いたシルバーブルーの髪が寒空の宵のなか、明け透けに晒してしまっている。
こちらが『勿体ない』と、隠してしまいたくなるほどに。
「……っふぅ、」
とたとた、と階段を下りていき。
ふたたび、遭遇した横断歩道の信号機が、赤に変わってしまったので、その信号機をぼうっと眺めながら青になるのをジっと待つ。
パッ、!と青にかわると左右を確認して。
車が両者側からも来ていないことを確かめた私は道路をわたり、公園内へとさらに、歩を進めていった。
みなれた、品質のよさそうなスリーピーススーツの様相で。
アーウェイさんもツカツカとこちらに歩いてきてくれたので、急ぎ足で私は「……遅くなりました」と謝辞を告げながら頭を下げた。
「…ぁの、」
「…」
近付いてきた彼は、その様相は美しいのに、せっかくの美麗なお顔はすこぶる、機嫌が悪そうである。
なんとなく、・・・・うちの愛猫ちゃんに似ている。なんて、内心でちょっと思っていたら、
ス────、と伸びた、男らしい手がスーツパンツに置いてあった位置から持ちあがり、私の顎先に引っかけるとすこし、屈んだ彼の純銀色の目とかち合う羽目になった。
「っ、」
「────寝不足、」
「…」
「クマ、できてんぞ。寝れてねぇのか?」
「……寝て、る」
「顔色もわりぃな。なに、生理?」
「………ちがう」
「ならなんで一人で帰るっつった?普段メールもLINEも総無視で電話しか寄越さねぇヤツが急にしかも一文だけ────、」
「、しんどい」
「…」
・・・・頭、いたい、しんどい。
今は、距離ちかいひととも距離を置きたい。
・・・くらい、しんどい。
今夜も綺麗にうねった、シルバーブルーの髪。
白大理石のような白皙の肌も、すべてにおいて完璧な顔の造形も。
今は、見るのがつらくて────…、