マフィアの弾丸





 苛立ちで、きゅ、と寄ってしまった眉頭といっしょに、顰蹙(ひんしゅく)したであろう自分の一刻者(いっこくもの)さは到底、自覚はある。



 とは言え。

 気が紛れたおかげで、多少は、偏頭痛が治まりつつあるのも確かなのだが(────無論、機嫌もこの上なくわるく、急下降した)




 腰回りに固定された手と、肩にまわった腕にがっちり、ホールドされていて未だに、身動(みじろ)ぎすらとれない。



 顔面にはっきり『いやだ』という表情を、こちらは貼り付けているにもかかわらず。



 ・・・・・知っているくせに、




 まったく離してくれないものだから結局、だんまりしているしか無いのだ。と

 とりあえず気配を消すことに努め出してみたのだけれど────…




 …ほんのり。

 それは唐突に意識すると、ほんのり。嗅覚を刺激する程度の、。



 アーウェイさんの纏うアロマの匂いや、車内の芳香剤とは、またちがった薬品のような香りが、

 鼻腔の奥をツン、と刺激してくるような、




 「……なん。か。におい」



 薬品みたいな匂い、する。と、もごもご音に発したような、気は、

 する・・・・・、



 のに────…。




 (…眠くなっ、……)




 なんだか急に、眠気を覚えたように目蓋が重く、下りてきて。


 うつろうつろ、と。

 瞬きを繰りかえし意識を保とうとしている私に、アーウェイさんの、無作法なことばが頭上から降ってくる。




 「────…電池切れか、……眠ぃんだろ。着くまであと数時間は懸かっから。寝てろ」




 「……ち、違う。…眠く、なっ。


 急に、…へんな……、



 きゅうに、……




 …ねむ、…ぃ、……

 ……くな、…っ────…、」




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