マフィアの弾丸
自分のうでの中で、安らかな寝息をたて瞼を閉じているあどけなさの残った少女。
彼女を、柔らかく見つめ下ろすその純銀色の両眼は、とてつもなく甘さが滲みでている。
先刻、フロントシートにいる構成員に牽制した男だとは、到底、おもえないほどの柔和さだ。
クロロホルムが効きすぎたか。
そう、苦笑いをこぼしながら、分かりやすくシートを揺らし体勢をずらしてみるものの、
まるで起きる気配は微塵もない。
少しもぞりと動いただけで、あとは、すぅすぅと肩が吐息に沿って、上下に波打つだけである。
…相変わらず、色気のねーカオ。
困ったように眉尻を下げ、スルり、女の唇に指先で触れてみるが、これでも目を覚まさない。
よほど疲労していたのか、脳が疲弊してたのか。
車内にのこった刺激臭をのがすべく、スモークガラスの半分だけを開けたアーウェイは、
すこしだけ外の寒気に浸るように、その銀色の視線を外に寄越した。
それでも映り込む景色はなんら面白味もなく、自身の臓器ですらソレらでは拍動しないことを知っているので、
ふたたび、彼は視線を腕のなかの、眠る少女へと移行させた。