マフィアの弾丸





 ス────、と自身の顔をかるく屈め、覗き込んだ丸い面立ちの輪郭に、もう一度すり、と指先を滑らせていく。



 女性らしく細いフェイスライン、
 右頬にある黒子、
 柔らかな肉付き。

 寝入っているのをいいことに、触り放題の少女の下唇、上唇。



 どれをとっても平凡に変わりはないが、時折みせる独特なオーラと、
 純真無垢に自分たちを見つめてくるまっすぐな両眼。




 ・・・・・単に世間知らずなだけか、
 怖い物知らずというのか。



 好奇心旺盛の気質を秘めてあるのに、非常に慎重深く、理知的。


 だからこそこれまでにも、危機的回避は有能であったのだろう。



 闇に染まりきらず、かと言って光りだけにも留まらず。




 (……優等だな。世間知らずではあるが馬鹿じゃねぇ)



 親の教育がいき届いてる証拠か。




 失敬にもほどがあるが、そんな憶測で一計を案じたアーウェイはいちど、嘆息する。



 そして腕のなかの少女が、まかり間違っても起き出さないよう、必要最小限の振動で体勢を変えることに徹した。



 丁寧に、慎重に、
 彼は自分の太腿を枕がわりに、伊万里の肢体を体重移動させ、


 柔らかく寝かせてやると
 傍らのシートに放り投げていた自身のコートを、その小さなからだにかぶせてやった。


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